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名刺の歴史をひもとく

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名刺の歴史をひもとく

はじまりは中国

ビジネスシーンはもちろん、趣味や習い事などのプライベートの場でも、名刺の交換は当たり前に行われています。名前や連絡先を簡単に交換できる名刺は、日本では便利なツールとして重宝されています。世界中で使われている名刺の7割以上が、日本で消費されているとも言われています。しかし、歴史をひもとくと、発祥の地は日本ではなく中国だとする説が一般的です。

三国時代の武将の墓から、名刺が発見されたという話もありますが、文献に登場するのは、7世紀から10世紀ごろの唐の時代になってからです。訪問先が留守の時に自分の来訪を知らせたり、地位の高い人に取り次ぎをお願いしたりなどの目的で使用されました。

今のような紙製ではなく、あらかじめ名前と用件が書かれた木片や、竹片を使っていました。それを「さし」と呼び、漢字では「刺」と書いていたため、「名紙」ではなく「名刺」という呼称になりました。郵便や宅配便の配達員が郵便受けに入れる不在通知のように、訪問先が留守の時に、「刺」を門前の箱に刺して来訪したことを知らせるという使い方をしたようです。

ヨーロッパからアメリカへ

ヨーロッパでは、16世紀のドイツで名刺が使われるようになりました。中国の唐の時代からは、数百年後のこととなります。やはり訪問先が不在の時に置いてくるメッセージカードの役割を担っていました。

その後18世紀には、ヨーロッパ全土へと広がって行き、特に社交界では必須アイテムとなります。最初はトランプの裏に名前を書いて交換していましたが、だんだん専用のカードを作るようになっていきます。その頃の名刺は、きれいな絵や銅版画などが施してあるものが主流でした。交換する際のマナーや形式も整備され、約束事を守ることが重視されるようになっていきます。

19世紀の中頃になると、写真入りのものが出てきます。これはフランスの写真家が考案し、1854年に特許を取得しています。同時にサイズも、持ち運びのしやすい大きさで、なおかつ写真が入ることが考慮され、57mm×82mmに決められました。ちなみに現在の欧米の標準サイズは89mm×51mm、日本の標準サイズは、91mm×55mmになっています。最近では、あえて標準サイズとは違う大きさにしたり、長方形以外の形を採用する企業も増えています。

その後、名刺はヨーロッパから海を渡り、アメリカへも拡大していきます。南北戦争後に、富裕層がステイタスとして持ち始めたのが、「Calling Card」と呼ばれるものです。これがアメリカにおける名刺の歴史の始まりです。第一次世界大戦以前は、「独身女性が持つ枚数」や、「男性から女性への渡し方」などに関する細かいマナーがありました。

また別に「Visiting Card」と呼ばれるものもありました。これは、お祝いやお悔やみの時に持参する他に、訪問先が留守の時に自分の来訪を知らせる意味で置いて帰るという使い方をしていました。中国の「刺」と使い方は似ていますが、玄関先に刺すわけではなく、執事に手渡すのが一般的でした。ここまでは、まだ名刺はビジネスシーンでは使われていませんでした。アメリカで「Business Card」と呼ばれるものが登場するのは、20世紀も半ばになってからのことです。これは、企業宣伝を目的としたもので、社名や業務内容が記載されています。アメリカでは、自分の名前や連絡先が書かれた自己紹介的なものは「Social Card」と呼びます。日本で言う、SNSの情報などを載せたプライベート名刺に近い使われ方をしています。

日本での進化

日本の歴史の中で、名刺が登場するのは19世紀、江戸時代になってからです。鎖国をしていた影響もあると考えられますが、中国の三国時代からは、ずいぶん長い時間が経っています。和紙に名前を墨書きしたものを、不在の訪問先に置いてくるという使い方は、中国やヨーロッパと同じです。

1860年代の幕末から開国の頃には、印刷されたものも使われるようになります。印刷技術が日本に伝わったためで、現代の形に近づきます。自分の名前と、その上に家紋を入れたものを、訪日した外国人と交換するために役人が持つようになりました。

欧米文化が押し寄せてきた明治時代以降は、日本の社交界でも必須アイテムとなります。特に鹿鳴館時代には、西欧文明を吸収し、外国人と対等に接するためにも、名刺の定着は欠かせませんでした。サイズは、今のものより一回り大きく、地位が上がるほど大きいものを使う傾向がありました。華やかな鹿鳴館時代にふさわしく、名刺入れなども、本革や織物に貴金属などで装飾するなど、高価で手の込んだものが多く作られました。

現代の日本では、様々な色や形、大きさの名刺があります。でも実は、こんなに多様化したのは最近で、バブル期以降のことです。種類もビジネスだけに留まらず、ママ友の間では子どもの情報が入ったもの、ドッグランなどで知り合った人同士で飼い犬の名前などが印刷されたものを交換するなど、さらに日本独自の進化を続けています。便利なだけでなく、自分を表現するツールとして、幅広く利用されています。

ライオン印刷
WRITER
ライオン印刷スタッフ
印刷業界10年以上の大ベテラン。お客様にご入稿いただいたデータのチェックや校正をはじめ、ONdesign(オンデザ)のデザインテンプレートを作成したり、X(@Lion_meishi)の中の人だったりとマルチなスタッフです。